5GやクラウドコンピューティングなどITインフラが浸透し、実用化が目前に迫っているXR(クロス・リアリティ)。ゲーム分野を中心に広まったXRでしたが、現在ではビジネスシーンへの応用が期待されています。そこで今回は、XRの概要やビジネスシーンでの活用事例、今後普及するための課題について解説します。
XRとは何か
現実世界と仮想世界を融合することで、現実では起こりえないことを体験できる技術が、XRです。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった技術も、XRのひとつだといえます。
XRという言葉が誕生したのは、VRやAR、MRの境界がわかりにくいためです。VRヘッドセットで遊べるゲームにARのコンテンツを組み合わせるとどれに分類されるのか。あるいは、現実世界に3Dのオブジェクトを取り込んだMRであれば、ARとの区別がつきにくい場合もあるでしょう。そこで、XRという言葉を作ることで、どれに該当するかわかりにくい場合でも、汎用的に適用が可能になるのです。
XRが注目を集めている背景
どうして今XRがトレンドになっているのでしょうか。以下2点の背景が挙げられます。
まず、次世代通信技術である5Gのスタートです。VRやARを体験するためには、スマートフォンやヘッドセットで閲覧する必要があります。こうした端末に3Dオブジェクトや映像を表示させるためには、大量のデータを送受信しないといけません。しかし、5Gの活用により、こうしたデータ転送が実現可能になりました。
もうひとつがドローンの発達です。災害区域や危険地帯など、人間では移動が難しかった場所でも、ドローンであれば簡単に飛行可能です。こうした特性を活かして、農業や運送業などで、ドローンの運用が始まっています。ドローンとXRとの融合も期待されており、ARマーカーで自律運転が可能になれば、今後ますます普及していくでしょう。
XRの種類と特徴
XRを構成するVR、AR、MRについても、簡単におさらいしておきましょう。
VRとは、仮想世界をあたかも現実にあるかのように体験できる技術を指します。専用のヘッドセットを装着することで、360度、自由な角度で仮想空間のコンテンツが楽しめます。
ARとは、現実世界に仮想的なデータを重ね合わせる技術のことです。例えば、スマートフォンのカメラでARマーカーを読み取ると、ディスプレイ上にデジタル情報などを映すことが可能です。
MRはARをさらに発展させ、現実世界に3Dの対象を重ね合わせるだけでなく、対象の操作が可能になるなど、双方向的なやり取りを可能にします。例えば、ヘッドセットを装着することで、実物大の恐竜を現実世界のなかに映し出すことなどが可能です。
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XRが期待される分野
2016年にVRが注目を浴び始めてから、XRの市場規模は年々大きくなっています。2021年には、前年比で37.1%増の192億円、2年後の2023年には632億円にまで達すると予想されています。
参考:デトロイト トーマツ/最新動向/市場予測 Digital Reality(XR)TMT Predictions 2021
XRの活用が期待される分野は広範に及びます。代表的なものが、ゲームやスポーツなどのエンターテインメント分野です。非日常を体験できるゲームや、自宅からでも参加できるライブビューイングなどのサービスが期待されます。
学校教育や企業内研修など教育分野での活用も考えられるでしょう。危険がともなう理科の実験などでも、XRで再現すれば子どもが安全に楽しめる教材となります。また、飛行機の整備など、座学だけでは難しい研修も、XRを使うことで理解度が向上するでしょう。
一方、製造業や建設業、医療など、社会の根幹を支えるビジネス分野におけるXRの活用にも期待が集まる状況です。現場で実際に製作しなくても、3Dの対象を作り出しシミュレーションさせることで、作業の支援や検証にも役立ちます。さらに、人工衛星などの装置が宇宙空間で故障しないかなどを事前にチェックしたり、マスクが新型コロナウイルスの感染を防げるかどうかのシミュレーションも行えたりするでしょう。
こうした技術はXRなしには実現できません。製造業や医療などの効率化には欠かせないものになるでしょう。