技術的な特化を続ける「VRChat」
いま現在特に著名なVRメタバースとして広まりつつある「VRChat」は、上記のような流れとは真逆のスタンスです。直近にかなり大規模なアップデートが続いているのですが、いずれもユーザー側の開発対応などが必要となるものです。
Want to control your #VRChat avatar with your MIDI controller? Put a heartrate indicator on your avatar? Implement your own eye and face tracking? Now you can, with OSC for Avatars! Read up, it's a lot! https://t.co/GH5CELHrRn pic.twitter.com/F2AIyr9GjU
— VRChat (@VRChat) February 17, 2022
まずひとつは「Avatar OSC」というアップデート。これは「VRChat」へOSC(Open Sound Control)を通してデータの送受信が可能となる機能です。音声入力でアバターのギミックを起動する、アイトラッキングデバイスから目の動きをアバターへ反映する、といったより幅広い表現を生み出しますが、あくまで提供されているのは仕組みだけなので、開発は各自で行う必要があります。
もうひとつは「Avatar Dynamics」というアップデート。こちらは従来「揺れもの」表示に用いられてきたUnityアセット「Dynamic Bone」にかわる、「VRChat」独自の「揺れもの」表現の仕組みなどが提供されるアップデートで、「他のユーザーのアバターに触れられる」といった一歩進んだアバター表現を実現します。ただしこちらも、既存のアバターを再調整する必要があります。
いずれもまだベータ版提供ですが、時には破壊的なアップデートも訪れ、それにユーザー側が追随するという光景が、「VRChat」ではしばしば見られます。技術的かつクリエイティブな方面へ全面的に展開していく姿勢は、「VRChat」の最たる特徴と言えるでしょう。
どのような「世界」を作り上げていくか
以上が、主要なメタバースをめぐる動向の一部となります。
大きく分けると、メタバースは「間口を広げる」と「特化させる」の2つの戦略が存在すると言えるかもしれません。Meta Quest 2とスマートフォンに対応すれば、ある程度の表現力と引き換えに多くのユーザーへリーチできるようになり、ユーザーやカルチャーの幅が広がる可能性があります。一方で、技術的な特化をしつつ、ユーザーも自由に触れるようにしておくと、「VRChat」のような底しれぬ表現力の実現につながり、それがユーザーを引きつける魅力になり得ます。
こうした戦略、ロードマップのコアにあるのは、「どのような『世界』を作り上げていくか」という信念になるはずです。信念がしっかりと確立されたプラットフォームには、それに共感するユーザーが集まり、結果的に息の長いメタバースの構築につながるでしょう。