XRが今後普及するための3つの課題
XRが今後普及するための課題として、以下の3点が挙げられます。
1.クラウドコンピューティングと高速通信網の普及が不可欠
遠隔地に大量のデータを送受信するためには、高速でデータを転送できる通信網と、リアルタイムでデータ処理を行えるエッジコンピューティングの普及が不可欠です。
前述したように5Gはすでに実用段階に入っていますが、エッジコンピューティング用のデバイスを各地に設置するには、まだ時間がかかるでしょう。これらのITインフラが整備されて、初めてビジネス現場におけるXRの活用が実現します。
2.高解像度などXRの性能の問題
XRがビジネス分野で実用化されるためには、高解像度の実現など一層の高性能化が必要です。現状では仮想空間における映像の解像度は荒く、現実世界のような体験をするにはリアル感が足りないといえるでしょう。
とはいえ、8Kの解像度を実現するVRヘッドセットの登場など高性能化は徐々に進んでいますので、今後の技術革新に期待したいところです。
3.ヘッドセット購入などコストの問題
XRはまだ一般に普及しているとはいえません。ビジネスで活用されるためには、ヘッドセットの価格を下げることが不可欠で、そのためには量産化が必要でしょう。ヘッドセットは現状、顔を覆うほどの大きさがあります。小型・軽量化による原材料費のカットなどによって価格を落としつつ、量産化する必要があるのです。
XRのビジネス分野における4つの活用事例
XRのビジネス分野の活用事例として、以下の4分野を取り上げてみましょう。
1.遠隔手術など医療分野
XRの活用が期待される分野の一つに医療分野が挙げられます。例えば、手術の技能は定量化しづらく、身に着けるのにも時間がかかりました。しかし、XRで手術シミュレータを実現できれば、手術の技能を効率的に向上させられるだけでなく、手術の成功確率も上がるでしょう。また、遠隔診断などもARやMRを使うことで、患者にとってわかりやすい説明が可能になります。
2.アバターでバーチャル会議
仮想空間上に「部屋」を作って、複数の人が参加できる「バーチャル会議」も、XRの活用事例の一つです。スライドの表示やホワイトボードへの書き込みなど、勉強会やイベントに遠隔地から参加できます。
各ユーザーは「アバター」で表示され、身振りや手振りなど臨場感あるコミュニケーションが可能な会議が実現します。また没入感が高く、リアルな会議のように集中できる点もメリットです。
3.展示会や観光地などへバーチャルツアー
ショールームや工場、学校等の現実の施設への見学や訪問体験を遠隔地から可能にするのが「バーチャルツアー」です。3Dスキャンで現実空間をデジタルで再現し、参加者は自分の視点で好きな場所を見ることや歩き回ることが可能です。
また、複数の人が参加し、顔を表示しない状態でも交流できます。
4.XRを実装したバーチャルストアで高齢者も活用可能
高齢や障がいなどの理由で移動が難しい方に向けて、自宅にいながらリアルなショッピング体験を実現する「VRショッピング」に期待が集まっている状況です。VRでリアルな店舗を再現するため、まるで本当にショッピングしているような感覚が味わえます。また、孫と同居していない高齢者でも、遠隔地から一緒にショッピングに参加できるでしょう。
今後も進化するXRに期待
近年、XRを活用したビジネスが徐々に誕生しています。特にコロナ禍の現在では、テレワークなど現場に行かなくても、遠隔地からリアルさながらの感覚を味わいながら作業できる環境が求められています。医療分野など、すでに実現しているものも多く、今後XR技術の発展がいっそう期待されることでしょう。