メタバースとゲームの違いとは?著名な定義のひとつから紐解く

written by浅田カズラ

メタバースに対して「ゲームとはなにが違うの?」という疑問を持たれている人は多いかもしれません。メタバースとゲーム(特にオンラインゲーム)には近しい要素もあり、こうした勘違いが起こるのは致し方ないところではあります。そこで本記事では、メタバースとゲームの違いについて解説します。

『バーチャルリアリティ学』における定義

大前提として、メタバースの明確かつ一意な定義はまだ存在していません。各所でプレイヤーや企業が定義を提示しているものの、それぞれの思想やポジションによるバイアスが多少かかっているのが実情です。このため、「ゲームとの違い」についても人によって見解が変わり得る点は念頭に置いてください(本記事についても同様です)。

まず、著名な「メタバースの定義」のひとつとして、日本バーチャルリアリティ学会が2011年に刊行したバーチャルリアリティ学における、メタバースの定義を引用してみます。

①3次元のシミュレーション空間(環境)を持つ。

②自己投射性のためのオブジェクト(アバタ)が存在する。

③複数のアバタが、同一の3次元空間を共有することができる。

④空間内に、オブジェクト(アイテム)を創造することができる。

日本バーチャルリアリティ学会『バーチャルリアリティ学』P251より引用

上記の定義は2011年のものですが、現在普及しているメタバースでは、ある程度実現しつつあります。実例と照らし合わせて見てみましょう。

「3次元のシミュレーション空間(環境)を持つ。」

細かく表現すると、「3Dで奥行きのあるCGでできた空間を、自由に移動することができること」となるでしょう。「VRChat」や「cluster」を筆頭に、多くのソーシャルVRなどで実現しています。

cluster「バーチャル渋谷」

一例として、「cluster」「バーチャル渋谷」を取り上げてみます。渋谷のスクランブル交差点を中心に3DCGで再現された空間で、移動できない区画こそ一部あるものの、現実の渋谷のように自由に移動することができます。こうした「自由に移動できる3次元空間」という特性は、WebページやSNSとは一線を画するものです。

ゲームとの差異については「空間を自由に創造・編集できるか」が一つのポイントとなり得ます。多くのゲームが提供する空間は、ゲームのパブリッシャーが作り、ユーザーの干渉できる範囲はある程度限定されます。しかし、多くのメタバースでは、ユーザーが自ら「ワールド」と呼ばれる空間を作り出すことが可能となっています。ただし、全てのメタバースがユーザーに空間の創造・編集権限を与えているわけではない点には注意が必要でしょう。

「自己投射性のためのオブジェクト(アバタ)が存在する。」

筆者アバター。「VRoid Studio」にて制作。

これも多くのソーシャルVR/メタバースで実現しています。「自己投射性」を平易な言葉で言い換えるならば「自分自身であると意識できること」になるでしょうか。つまり、自分らしいアバターが存在し、自らの分身あるいは自分自身として操作できるということです。

この「自分らしい」は、「現実の自分の身体と同一・近似であること」とイコールであるとは限りません。現実では「30代の男性」であったとしても、「大剣を背負った狼男」や「セーラー服の女子高生」が「自分らしい」と思えるのであれば、それらが実現できることが望ましいです。

ソーシャルVRユーザーの実態調査「ソーシャルVR国勢調査2021」では、現実の身体とは逆の性別のアバターを使うユーザーが、男性では実に7割に上るという調査結果が出されています。その回答として「より自分を表現しやすい、またはコミュニケーションをしやすいから」が一定数を占めており、ここからも、現実と同一であることが「自分らしい」とは必ずしもいえないことがうかがえるでしょう。

参考:ソーシャルVR国勢調査2021

ゲームとの差異は、「アバター世界観がプラットフォームに縛られていないこと」でしょう。リアル路線も、アニメ調も、ユーザーが自由に選択できる方が「自分らしさ」に近づくためです。多くのゲームは、非常に幅広いキャラクタークリエイト機能を有していても、「そのゲームの世界観」からは逸脱が難しく、自己投射性の実現には難があります。「VRChat」や「cluster」では、アバターはプラットフォームの外で作成してアップロードする方式を採用し、幅広いアバターを持ち込むことが可能となっています。

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浅田カズラ

xRとVTuberを追いかけ続けるバーチャルライター。xR/VTuber関連のニュースをデイリーでまとめる業界情報ブログ「ぶいぶいているろぐ」を運営。

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