複数人が情報共有できるARクラウドとは?背景や課題、事例を紹介

written byNuxR編集部

従来のARでは、一人のユーザーが端末を使って没入感を味わえるだけでした。しかし、ARクラウドは複数人が情報共有できることで、双方向的なゲームが楽しめるほか、ビジネスへの応用にも期待が集まる状況です。そこで今回は、ARクラウドが生まれた背景や技術的要件、課題、現在の事例について解説します。

ARクラウドとは

ARクラウドとはARを発展させた最終形とも呼べる技術で、現実世界にリアルタイムで3Dのオブジェクトをマッピングさせる技術を指します。

従来のAR(拡張現実)では、専用のヘッドセットやスマホの画面上にデジタル情報と現実世界を重ね合わせた世界を映し出し、ユーザーに没入感のある体験をもたらしました。一方でARクラウドは、複数のデバイスでこうした拡張世界を共有できることが従来のARに勝るメリットです。

ARクラウドが実現すれば、現実世界と同様に画像や映像、音声など、重ね合わせたデジタル情報がリアルタイムに変化し、複数のユーザーが共有できるようになるでしょう。

ARクラウドは15年後にはGoogleの検索インデックスやFacebookのソーシャルグラフに匹敵するソフトウェアインフラになると予想されています。

ARクラウドができた背景

ARは専用のヘッドセットやスマホなどのデバイスで、例えば実際の部屋の中に仮想的な家具を設置したり、実際の自動車に好みの「色」を仮想的に重ね合わせたりできます。ARは没入感のある世界を作り出すことができる反面、複数のユーザー間でコンテンツを共有することはできませんでした。

一方、ARクラウドは個人のAR体験を全人類が同時に共有できる可能性があります。ARクラウドの実現を可能にするものが、ハードウェアの急速な発展です。

ARを実現する3Dデータは大量の容量が必要なため、複数のユーザーがAR体験を共有するためには、大量のデータが通信できる通信網の整備が必要です。近年、大量のデータを送受信できる5Gや安価でARが視聴できるスマホの登場により、全人類が参加可能なARクラウド実現の見通しが立ったといえるでしょう。

ARクラウドの仕組み

ARクラウドは3つの基幹技術から成り立っています。

1.ポイントクラウドをデータベース等に保有

ARクラウドを実現するための要件のひとつが、ポイントクラウドの生成です。ポイントクラウド(点群クラウド)とは、3次元空間における点の集合体を指し、現実世界の空間や物体の3次元情報と紐づいています。こうしたポイントクラウドを、クラウド上のデータベースに保有することが必要です。

2.複数のデバイスがポイントクラウドを正確に取得

ARクラウドの2つめの要件が、あるオブジェクトを複数のデバイスから別の角度で参照した場合でも、カメラの位置や方向を推定することで、空間座標に存在するコンテンツや情報をリアルタイムに読み取れることです。これにより複数のデバイスが、ポイントクラウドの情報を正確に取得することが可能になります。

3.リアルタイムかつ双方向的にAR体験を共有できる

3つめの要件が、3Dのオブジェクトを複数のデバイスから閲覧でき、双方向的に干渉できることです。双方向的に情報を共有するためには、高速回線を用いてリアルタイムに情報をアップデートできる環境が必要になります。こうした大量のデータ流通を可能にする技術のひとつが5Gです。5Gの登場によりARクラウドの実現性がより高まったといえるでしょう。

ARクラウドでできる3つのこと

ARクラウドでできる3つのこと

ARクラウドが実現すると、以下のようなことが体験できるものと予想されています。

1.相手との双方向的な体験

1つめは、複数の人が双方向的な体験ができることです。「ポケモンGO」を例に説明しましょう。ARゲームであるポケモンGOは、1人のプレイヤーがポケモンを捕まえるゲームです。

現段階のポケモンGOでは、他のプレイヤーがあるプレイヤーのゲームに干渉できません。しかし、ARクラウドに対応すれば、1人のプレイヤーがポケモンを捕まえやすくなるようにサポートすることで、別のプレイヤーがポケモンを捕獲しやすくなるといったインタラクションが可能になるでしょう。

2.現実世界へのコミット

2つめは、現実世界へのコミットです。例えば、観光情報を提供するアプリを考えてみましょう。ユーザーはリアルタイムに観光情報が参照できるだけでなく、コメントや「いいね」を残すことが可能です。また、ユーザー同士でコミュニケーションできるようにもなります。

3.ドローンやロボットをきめ細かく運用

ARクラウドの応用事例として、ドローンやロボットをきめ細かく制御可能になることが挙げられます。リアルタイムで変化する現実世界の情報を共有することで、自動運転時の突発的なアクシデントを避けて事故のリスクを抑えたり、配送ミスを減らしたりすることが可能になるでしょう。

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