いわゆる「メタバース」と呼ばれるプラットフォームは、2022年現在は相当な数に上りつつあります。しかし、全てが同じような戦略で発展しているわけではなく、各所ともに独自色を打ち出しています。本記事では、メタバースプラットフォーム運営企業の動向・戦略を簡潔にご紹介します。
間口を広げる
多くのメタバースプラットフォームは、間口を広げることへの注力を続けています。代表的なものが「cluster」で、2021年12月から2022年の1月にかけて、Meta Quest 2対応、アバターのアップロード制限解放を実施しています。もともと「cluster」はスマートフォン対応を先駆けて行ってきましたが、現時点でもっとも普及しているVRデバイスへの対応と、ファイルサイズやテクスチャなどを気にせず好きなアバターを使える対応によって、間口は一気に広まりました。
さらに2022年2月には、プリセットのパーツを組み合わせることでワールドが簡単につくれる「ワールドクラフト」機能が実装されました。スマートフォンからでも使える機能なので、ワールド制作の面でも間口を広げていると言ってよいでしょう。
三越伊勢丹による仮想都市プラットフォーム「REV WORLDS」など、スマートフォンアプリから展開するケースも見られます。PCと比較すると表現の制約は避けられませんが、PCを所有しない世代が増えている現在では、スマートフォン対応は幅広いユーザー層を取り込める施策となり得ます。東京ガールズコレクションの公式メタバース「バーチャルTGC」のような、特定のイベント向けの会場としてメタバースも、スマートフォンアプリとしての展開例が増えています。
メタバースへの拡張・転換
もともと、別のカテゴリのプラットフォームだったものを、メタバース的なものへと拡張させるというケースも増えています。というより、現行の多くの「メタバース」とされるものは、直近のメタバースブームを受けて、あとからそう名乗っているものがほとんどではないでしょうか。
ざっと列記するだけでも、以下のような拡張・転換が各所で行われています。
- cluster:VRイベントプラットフォームから、ワールド機能やソーシャル機能の拡充により、メタバースプラットフォームへ
- バーチャルキャスト:VR空間上の配信スタジオから、ルーム機能などを追加していき、メタバース的な側面を獲得
- VARK:VRライブプラットフォームに、ワールド機能などを拡充してメタバース的な側面を獲得
- DMM Connect Chat:アバターを用いたコミュニケーションができるソーシャルVR「Connect Chat」を、2022年3月に大幅機能拡充し、メタバースプラットフォーム化
- ZEPETO:もともとはアバターを作成して自撮りなどができるアプリだったが、アバターで入れるワールド機能などが拡充され、メタバースプラットフォームとしても発展
上記を見ればわかると思いますが、それぞれかなり出自が異なるものが、いまひとくくりに「メタバース」と呼ばれる状態となっています。今後もこうした転換や拡充は増えていくものと思われますが、しっかりとコンセプトや独自性を打ち出せなければ、規模や表現力で競り負ける可能性があるため、どのように発展させていくかは重要になっていくでしょう。