私の名はわなげ。好きな食べ物は餃子と焼肉とお寿司。毎年自分の年齢を忘れがちになるが、今年32歳になる女だ。
この年になると、新しいことを始めるよりもできれば毎日コタツでぬくだまっていたくなるのが世の常。俺はこういう人間だ、といわんばかりに、自分の世界は家にあるタイプなのである。
そんな折、「VRやARの世界に、わなげも来ちゃいなよ!」と某シャチョーにいざなわれたのは先々月のことだった。
「ああしかしYou……私はVRもARもよくわからないですし」などとクヨクヨしながらも、いつものことながら頑張ることを宣言。NuxRの業務では、あんなことやこんなことなどを担当することになった。(どんなことよ……)
話は進んでいき、先日の打ち合わせでは「あーそうだ、わなげもなんか記事書いちゃいなよ!」という流れになった。それに対しての私の返事は「はい!」どころか「ひぃぃ!」だった気もしたが――そうして後日、歌舞伎揚を片手にいまこの記事を書いている。
うーむ、歌舞伎揚への愛についてなら2000文字は書けるが、VRやARについてはチンのプンのカンだ。キーボードを叩こうとしても、手が瞬時に石化することはお察しだろう。
私の座右の銘「なるようになる、なるようにする」を頭で唱えるほど、顔面蒼白になっていくのがわかった。
こういうときは一休み、ポクポクチンだ。私は仮想のジョリ髭を作り、顎を触りながらしばらく考えた。ああそうか、愛か。書くなら愛がないと。
まずはVRのこと、もっと知りたい!
出向いた先はビックカメラだった。
そういえば3階のテレビコーナーに展示があったような……。私はエスカレーター横に展示されていたそれの前に立った。
その昔、スマホの展示品を手に取ったら万引防止の警報機がビビビビーッ!!と鳴って涙した経験があるので商品自体には触れはしなかったが、VRの世界に踏み出すなら触らずとも即決である。ゲーム好きの私にピッタリなブツ、Oculus Quest 2だ。
一応パンフレットもいただいていくか、と展示棚の中央にあったパンフレットを手に取るなり、私は目を丸くした。
なんと、パンフレットの右下に「from FACEBOOK」と書いてあるではないか。
例のパンフレット
これは本当かいザッカーバーグ……いつのまに彼らはそんなハイテクなものを生み出していたのだ。いやはや、コタツにいては世界は見えないものだな。
とはいえ、一応私もゲーム好きなのでOculusについての知識は「ガンダムのビームサーベルみたいなやつをブンブン振り回すアレ(注:Beat Saberというらしい)」だけは知っていた。おそらくあれはOculus入門編的なポジションのゲームなのかもしれない。音ゲーは苦手な私だが、あのゲームはやっておきたい。
(……さてと、レジへ行こう。)
しかし、店員さんに渡す商品カードのようなものが見当たらない。レジに行けばなんとかなるかと、ひとまずパンフレットを片手にレジに向かうことにした。