ヴェネチア国際映画祭にノミネートのVR演劇『Typeman』

written by結木千尋

VR演劇『Typeman』がヴェネチア国際映画祭にノミネート。受賞なるか。

VR演劇『Typeman』が第79回ヴェネチア国際映画祭クロスリアリティ(XR)部門「Venice Immersive」にノミネートされました。

同作は、株式会社WOWOWと株式会社CinemaLeapが共同製作したVR演劇。メタバース空間で演者がリアルタイムに実演する舞台です。体験者は、『Typeman』の演者たちとともにバーチャルの世界に入り込み、間近で舞台を鑑賞したり、コミュニケーションをとったりできます。そのようにして描かれた物語を進めていくことが、『Typeman』の楽しみ方となっています。

ヴェネチア国際映画祭は、今年で79回目の開催を迎える世界最古の映画祭で、カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭とならび、世界三大映画祭に数えられています。同作がノミネートされた「Venice Immersive」は、2017年に新設された部門で、2022年で6期目。創設当初は「Venice VRExpanded」という名でVR部門として親しまれてきましたが、今年から「Venice Immersive」に名を変え、バーチャルリアリティ技術だけでなく、あらゆるXRの創造的表現手段に対象を広げました。

WOWOWとCinemaLeapによる作品がヴェネチア国際映画祭のXR部門へとノミネートされるのは、2020年の『Beat』、2021年の『Clap』に続き、3度目のこと。『Typeman』では、VRアニメーション監督の伊東ケイスケを監督に据え、3年連続のノミネートを果たしました。

例年、受賞作品が発表されるのは、映画祭が開催される8月末から9月初旬にかけてのこと。日本のVR作品が快挙を成し遂げるか、注目です。

VR演劇『Typeman』概要

作品名:Typeman

ジャンル:アニメーション
作品尺:25 分

製作年:2022年
製作:株式会社WOWOW/株式会社CinemaLeap

作品紹介ページ

あらすじ

世界は常に変化し、私たちは突然今までとは異なる価値観の世界で過ごさなければいけなくなることがあります。この作品は、そんな新しい世界との向き合い方を、一歩立ち止まって考えてみる作品です。
Typemanはこれまで多くの人間に必要とされ、期待や喜び、悲しみを分かち合い、ともに時間を過ごしてきました。しかしいつしか人々から忘れられてしまい、自分の存在意義を見失ってしまいます。体験者は古びたアパートの一室で、そんなTypemanと出会います。

あなたは初めてTypemanと向き合ったとき、彼に対してどんな感情を抱き、どのような行動をするでしょうか。その世界で誰かの存在に気付いたとき、あなたはここにいる意味を考え始めるでしょう。

制作チーム

監督:伊東ケイスケ(VRアニメーション監督)

エグゼクティブプロデューサー:藤岡寛子(株式会社WOWOW 技術局技術企画部 チーフプロデューサー)
プロデューサー:待場勝利(XRコンテンツプロデューサー/株式会社Psychic VR Lab プロデューサー)
アシスタントプロデューサー:大橋哲也(株式会社CinemaLeap 代表取締役)

振付 &アクター:YAMATO(振付師)
ストーリー・ライター&ストーリー・コンストラクター:中嶋雷太(映像プロデューサー兼物語作家)

音楽:森下唯
レコーディング&ミキシングエンジニア:蓮尾美沙希(WOWOWエンタテインメント株式会社)

VRChatサポーター&コーディネーター:タナベ
テクニカルサポーター:ヨドコロちゃん
VRサウンドエンジニア:らくとあいす
VR演技指導&アクター:YOIKAMI(Dramaturg)

伊東ケイスケ監督コメント

Typeman

体験者の皆さんは、この作品のメタバース上で、「Typeman」という世の中から忘れ去られた存在と出会います。
孤独が現代社会で大きな問題となっている中で、Typemanと共に喜びや悲しみ、戸惑いなどさまざまな感情を共有することで、孤独感を吹き飛ばしてもらいたい、また人とのつながりを再認識してもらいたいと願ってこの作品を制作しました。
この作品を体験する方と、Typemanがお互いにその存在を認め合うことで、私たち自身がこの世界に存在している意味をあらためて感じるきっかけになればと思っています。

伊東ケイスケ監督プロフィール

VRアニメーション監督。多摩美術⼤学グラフィックデザイン学科卒。メーカーのグラフィックデザイナーを経て、2012年よりフリーランスのCGアーティストに転⾝。現在はVRを⽤いたインタラクティブなストーリーテリングに挑戦している。2019年に「Feather」が第76回ヴェネチア国際映画祭にて、VR部⾨では⽇本⼈初のビエンナーレカレッジセレクションとしてプレミア上映。2020年発表作品の「Beat」は第77回ヴェネチア国際映画祭のVR部⾨、および「Cannes XR」 VeeR Future Award 2021にノミネート。2021年発表作品「Clap」は第78回ヴェネチア国際映画祭のVR部⾨、および「Cannes XR」VeeR Future Award 2022にノミネート。ほか、ベルリン国際映画祭、釜⼭国際映画祭、SIGGRAPHなど数々の映画祭で監督作品が上映されている。

Typeman

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結木千尋

ユウキチヒロ。フリーライター・インタビュアー。 関心事はサブカルチャー(音楽・映画など)。 AORとミニシアター系の邦画が大好物。 グリーンカレーの海で溺れたい。

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