2022年のVRChatは何が起こっていたの?話題になった出来事を振り返る

written by浅田カズラ

EAC導入と一部コミュニティの反発

VRChat Security Update

2022年は、VRChatそのものに大きなアップデートがいくつも入りました。特に大きいのは「Easy Anti Cheat(EAC)」の導入です(アップデート詳細)。様々なゲームで導入されてきたチート対策ツールですが、これに一部のユーザーが猛反発するという出来事が起こりました。

その一部ユーザーには「MODユーザー」が含まれています。ゲームに外部から変更を加える「MOD」は、VRChatでも利用者が一定数存在しました。EACは、こうしたMODを遮断する効果があり、荒らし行為や他ユーザーのアバターを「抜き取る」ことができる悪質なMODの遮断が期待できます。

しかし、MODの中には聴覚障害サポートといった、公式提供のないハンディキャップを抱えるユーザーの補助ができるものも存在しており、こうしたものも遮断してしまうことがMODユーザーが反発した一因と考えられます。

EAC導入後、MODユーザーの一部はボイコット運動の展開や、「Neos VR」や「Chillout VR」といった別プラットフォームへの移住、「Steam」のVRChatページへの低評価投稿など、VRChatから距離をとる動きを見せました。こうした動きを重く見てか、8月以後のVRChat運営は開発ロードマップを大々的に公開。そして、テキストチャットや音量調整など、MODとして提供されていた機能を公式に取り込み始め、より幅広いユーザーの利便性を引き上げようとしています。

VTuberたちの進出

去る人もいれば来る人もいるもの。2022年のVRChatには、いわゆるVTuberと呼ばれる人たちが着実に訪れるようになっています。動画や配信のネタとして取り上げるVTuberが増えており、「あのワールドであのVTuberを見かけた」という報告も少しずつ増えています。筆者の周囲でも、プライベートで遊びにきているVTuberはたびたび見かけます。

VRChat「【ぽんぽこ24】Vol6 同時視聴ワールド!VRC宇宙会場【Ponpoko24】」

単に活動の場とするだけでなく、ワールドを作ってしまうVTuberも現れています。毎年恒例となっている、甲賀流忍術ぽんぽこさんとピーナッツくんによる24時間配信企画「ぽんぽこ24」では、誰もが自由に出入りできる特設会場をVRChatに公開しました。遊び心のあるワールドなので単に訪れても楽しく、さらに会場からも配信を視聴できるため、多くのファンが「現地観覧」を楽しんでいました。

VRChat「Re˸AcT VTuberWorld」

自らワールドを作るVTuberも少なからず現れています。特に水瓶ミアさんは、自身が所属する事務所Re:AcTの魅力を発信するべく、特設ワールドRe˸AcT VTuberWorldを作成しました。ワールドではメンバーのプロフィールや代表的な楽曲・歌ってみたを一挙に知ることができ、さらにファン同士の交流ができる仕掛けも多くそろっています。季節ごとのアップデートも現在に至るまで続いており、何度も訪れたい場所として育てられているのも大きな特徴です。

VRChat「Royal Flash Theme Park」

英語圏では、今年はNIJISANJI ENホロライブEnglishにてVRChatをプレイし、配信するVTuberが多く見られました。とりわけ「NIJISANJI EN」は、特設ワールドをこれまで3つ公開し、ファンとの交流の場として活用を進めています。もともと英語圏のVTuberはVRChatを積極的に利用する傾向はあったのですが、いわゆる大手でも同種の傾向が見られるのはおもしろいところです。

12月には超軽量で小型なフルトラッキングデバイスmocopiHaritoraX ワイヤレスが相次いで発表されたことで、VTuberが3Dモデルを得た先の活動地点として、VRChatはさらに注目を集めています。2023年には、これまでYouTubeなどを中心に活動してきた「バーチャルなタレント」が、VRChatで育ったタレントやクリエイターと出会い、新たな動きが生まれるかもしれません。

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浅田カズラ

xRとVTuberを追いかけ続けるバーチャルライター。xR/VTuber関連のニュースをデイリーでまとめる業界情報ブログ「ぶいぶいているろぐ」を運営。

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