注目のソーシャルVRサービス「VRChat」とは?法人の活用事例も紹介

written by浅田カズラ

法人がVRChatへ進出するにあたってのヒント

注目度の高いイベントが多く開催されたこともあり、「VRChat」への進出を検討している法人も増えていると思われます。まだまだ先例が多くないため、ベストプラクティスといえるものは確立していないと思うのですが、いくつかのポイントは挙げられます。

まず、メタバースとの親和性が持ち上げられるNFTやブロックチェーン技術については、「VRChat」では対応の予定はなく、またプロモーションや勧誘なども明確に禁止することが公式に発表されています。過去には「バーチャルマーケット」に出展されていたNFT関連のブースが撤去されるという出来事もあり、今後もしばらくは厳しい対応となることが予測されます。

参考:Our Policy on NFTs and Blockchain in VRChat – VRChat公式サイト

また、決済機能も「VRChat」には実装されていません。「VRChat」内で直接物品を売買することはできないため、もっぱら外部サービスへのリンクを設置し、誘導するという手法が、現時点では主流です。

そしてなにより、「VRChat」はユーザー主体の文化が根強いため、強引な法人の進出に対しては警戒されることは必至です。安直に商売っ気の強い施策を打つだけでは、逆に企業イメージを損なう可能性もあるでしょう。

「日産アリアとめぐる環境ツアー」プレス向け体験会の様子

ではどうすればいいのでしょうか? 好例として、上述した「バーチャルギャラリー『NISSAN CROSSING』」が挙げられます。まず同ワールドは単なる日産自動車のプロモーションの場にとどまらず、ユーザーが自由に使ってよい場所として開放しています。2階に設けられたフリースペースが最たる例で、ユーザーはここで昼寝をしてもいいし、友人と飲み会をしてもいいし、勉強会の会場にしてもいいのです。

また、「バーチャルギャラリー『NISSAN CROSSING』」は、「VRChat」のコミュニティで活躍するクリエイターとともに作り上げたという点も大きいです。プレスリリース発表時には、ワールド制作、楽曲制作、プレス向け発表会スタッフ、日産社員へのアバター演技指導など、様々な役割を担った人たちもクレジットに記載し、紹介するという施策が取られました。また、プレス向け発表会には、コミュニティのインフルエンサーも多く招致しており、日産社員もカスタマイズを施したアバターで参加するなど、「VRChat」コミュニティを尊重する姿勢を見せました。一連の施策はコミュニティからも良好な反応が得られており、その後ユーザー主催イベントが開催されたり、上述した環境ツアーに多くの人が参加するという結果につながっています。

参考:日産自動車、バーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」を公開 – 日産自動車ニュースルーム
参考:日産自動車、メタバース上で体験する「日産アリアとめぐる環境ツアー」を制作 – 日産自動車ニュースルーム

メタバースとは単なるプラットフォームではなく、人が暮らし、コミュニティを形成している、ひとつの国のようなものといえます。よって、進出にあたっては「現地」に住む人たちへの理解が大切です。そして、コミュニティを理解し、かつ尊重する施策を打つためには、実際にコミュニティに参加してみるのが近道になるはずです。

可能であるならば、法人担当者としてではなく、一個人として「VRChat」を始めてみて、ドップリとハマってみることをオススメします。一ユーザーとしての視点を得て初めて、「VRChat」でどのようなことをすると喜ばれ、プロモーションにつながるかが、見えてくるはずです。

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浅田カズラ

xRとVTuberを追いかけ続けるバーチャルライター。xR/VTuber関連のニュースをデイリーでまとめる業界情報ブログ「ぶいぶいているろぐ」を運営。