静的なWebサイトと呼ばれるWeb1.0とは?特色や具体例、Web2.0への移行の経緯について解説

written by小村 海

Web1.0は、ワールドワイドウェブの進化の初期段階を意味します。静的なWebサイトと呼ばれ、ユーザーの大多数がコンテンツの消費者であるのが特徴です。

そんなWeb1.0について知らない人は多いのではないでしょうか。Web3.0がトレンドになる中、Web1.0について理解を深めるのは、非常に有益です。

これを受け、今回から3回に分けて、Web1.0とWeb2.0、Web3.0の概要や具体例を説明します。

第1回の本記事では、Web1.0の意味や特色、具体例、Web2.0へ移行した経緯について解説しますので、Web2.0とWeb3.0を知る前段として、ご一読いただけますと幸いです。

>>第2回はこちら「ユーザー参加を可能にするWeb2.0とは?特徴や具体例を解説」
>>第3回はこちら「分散型インターネットと呼ばれるWeb3.0とは?長所や具体例について解説」

Web1.0の意味とは?

Web1.0は、1991年ごろから、双方向性を特徴とするWeb2.0の潮流が現れる2004年ごろまでにWeb上で提供されてきた、インターネット初期の段階のことです。

Web1.0は、現在と同様、HTMLなどハイパーテキストなど、文書内に埋め込まれた他の文書と画像を結びつけるハイパーリンクで結合されたWebページで構成されていました。

しかし、Web上に表示される投稿用のフォームなどがありませんでした。Webの提供者とユーザーの関係は一方的であり、読み取り専用のWebだったのです。

また、Web1.0は、現在のように、ユーザーが独自ドメインを取得してWebを構築する仕組みは主流ではありませんでした。

大半の個々のWebページは、インターネットサービスプロバイダー(ISP)が運営するWebサーバーまたは無料のWebホスティングサービスに紐付けられている静的ページで構成されていたと言われています。

Web1.0の特色

Web1.0の特色は、静的なWebという概念イメージを踏まえると、下記の3つに集約されます。

  1. テキストや静止画が中心
  2. サイトに到達(ディスティネーション)するのが目的
  3. XML濃度が薄い

ここからは、それぞれの特色について解説します。

テキストや静止画が中心

Web1.0では、Web上に掲載するコンテンツは、テキストや静止画が中心です。

これは、音声や映像などのマルチメディアコンテンツが主流のWeb2.0とは、大きな違いと言えます。

サイトに到達(ディスティネーション)するのが目的

Web1.0でのインターネットビジネスは、サイトに到達(ディスティネーション)するのが目的だと言われています。

当時は、サイトに広告を掲載するのが禁止され、トラフィックが流通するサイトではなかったからです。

これは、Web2.0的なビジネスがSEO(検索エンジン最適化)に対し、Web1.0的なビジネスがドメイン名売買であることからもわかるでしょう。

XML濃度が薄い

Web1.0は、データの内容によって文字を修飾するタグを自由に定義できるマークアップ言語であるXMLの濃度が、Web2.0と比べて薄いと言われています。

代わりに、Web1.0は、同じくマークアップ言語であるHTMLの占める割合が高いという構造となっています。

HTMLは、データの相互連携に制約が大きいマークアップ言語です。ユーザーにとっての可視性、可読性が高い反面、決められたタグしか使えず、文書構成を自由に設計する、電子商取引(EC)などで発生するデータを表現する、といった点で、欠点を有します。

このため、Web1.0は、Webがネットワーク化しているのにもかかわらず、異なるWebサイト間のデータ連携は不可能であり、利便性に欠けていたのが実情でした。

Web1.0の具体例

Web1.0の具体的事例にはどういったものがあるのでしょうか。

ここからは、具体例としてホームページとAkamai、ディレクトリの3つを紹介します。

ホームページ

厳密な定義はあいまいですが、ホームページは、静的なWebサイトの集合体であることから、Web1.0的な側面が強いWebです。

ホームページは、個人や企業の看板的な役割を果たす意味合いが強く、顧客とリアルタイムに交流する機能は期待されていません。

今では、問い合わせフォームを搭載しているホームページは少なくありませんが、ISPが運営するWebサーバーの利用が主流の時代は、書き込み可能な機能を可能にするインフラがないホームページばかりでした。

Akamai

Akamaiは、多数のサーバーと高速のネットワークを駆使し、大容量で高速のコンテンツを配信するコンテンツ・デリバリー・サービス(CDN)です。

クライアント側が相互にファイルを共有するP2P(ピア・ツー・ピア)方式を採用するBitTorrentなどと異なり、Akamaiは、サーバー依存型のシステムと言えるでしょう。

しかしながら、転送量に応じて利用料金が決まるCDNは、2022年現在も存在する仕組みです。

昨今は大規模Webサイトだけでなく、中小規模のWebサイトでも構築、運用コストを削減を目的に利用するケースが増えています。

このように、Web1.0的なシステムは、前時代的だからと言って、必ずしも全く役立たないという訳ではないのです。

ディレクトリ

ディレクトリは、ジャンルごとに分類、収録した検索サイトです。

Web会社側の人間が各ジャンルごとに手動でサイトを審査、登録していることから、サイト構築に非常に労力がかかるため、サイト数が少ないと言われています。

昨今では、ヤフーが創業当時より運営していた「Yahoo!カテゴリ」が有名でした。しかし、ロボット型検索の流行を受けて、2018年3月にサービス終了しています。

参考:「Yahoo!カテゴリ」サービス終了について – ニュース – ヤフー株式会社

Web1.0からWeb.2.0への移行

Web1.0は、相互性に欠け、自己完結的なシステムでしたが、情報を知りたいという多くのユーザーの欲望を満たしました。

ただし、ユーザーの渇望が止まることはありません。

ユーザーの欲望は、情報を知りたいから、「相互につながり、情報を共有したい」に変わり、その欲望は、コンピュータネットワークの発展に伴い、増幅していきました。

そうした人々の願望をかなえるかのように、誕生したのが、Web2.0という新たなインターネットの概念です。

コメント形式でユーザーが作成するコンテンツや、ソーシャルメディアネットワークサービス(SNS)といった次世代型ネットサービスの誕生は、Web1.0からWeb2.0への移行を推し進めました。

Web2.0は、インターネットの世界をどう変えたのでしょうか。連載の第2回では、今回に続く形で、Web2.0の定義や特徴、具体例について解説していきます。

 

>>第2回はこちら「ユーザー参加を可能にするWeb2.0とは?特徴や具体例を解説」
>>第3回はこちら「分散型インターネットと呼ばれるWeb3.0とは?長所や具体例について解説」

written by

小村 海

おむら・わたる。「難しいことを簡単に」をキャッチコピーに活動するフリーライター。元地方紙、雑誌記者。クライアントや物事の良い側面を翻訳し伝えることを活動指針とし、主にIT記事を作成している。趣味は野球で、競技歴は12年を超える。一方で、本好きでもあり、新刊には目が無い。

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