『ハトバース』はコミュニティ運営のモデルケースとなるか

written byゆがみん

4月7日にリリースされたiOS・Android向けアプリ『ハトバース』。

プレイヤーはハトとなり仮想空間を散策。滑り台やシーソーを楽しめる他、他のプレイヤーが操るハトたちとリアルタイムでコミュニケーションを取ることができます。

メタバース×ハトのジョークアプリ?『ハトバース』

『ハトバース』は株式会社ファクトリーが運営するiOS・Android向けアプリ。

そもそもこの『ハトバース』、メタバースの定義として、投資家マシュー・ボールが掲げた「7つの条件」が知られていますが、『ハトバース』はその殆どに当たりません。経済圏があるわけでもなければ、自由にアバターやワールドを制作できるわけでもないのです。

株式会社ファクトリーは他にもジャンプゲームアプリ『ハトジャンプ』を運営。『ゆっくりハトジャンプ』『セクシーハトジャンプ』、はたまた『ハト電卓』といったアプリをリリースしており、『ハトバース』もそこからのアイデアが活かされています。

そんなわけで『ハトバース』も、ある種バズワードとなった「メタバース」の言葉にかこつけたジョークアプリのような内容となっています。リリースと同時に発表されたカンファレンス動画では「今や世界が注目する『メタバース』正にこのタイミングで、『ハトバース』と言いたい」とリリースの理由が語られています。

散策できる仮想空間上に配置されているのは前述した滑り台やシーソー、あとは歩き回るニワトリが3匹といったところ。同時に同じ空間に存在できるのは30人までで、ワールドと呼べるものは1つだけ。ボイスチャットはもちろん、テキストチャットも存在しません。当然、ブロックチェーン技術やNFTといったものの実装もありません。

カンファレンス動画でも言われているとおり、「2分で飽きる」ゲームとしてSNSでも話題となりました。実際、筆者もこの記事のためにアプリをインストールしてみましたが、画面に広がるのは窪地に遊具が置かれた公園のような空間。自分の他にはニワトリが歩くだけという体験は、確かに2分以上遊ぶ楽しみを見つけることも難しいものです。

「2分で飽きる」という評判を一掃するアップデートの数々

しかし一方で『ハトバース』には定期的なアップデートが入りそのたびにSNSでも話題になるポテンシャルがあります。

4月には期間限定イベントとしてハトではなく鴨を実装。5月には2分ごとにワールドの明るさが変わるシステムを実装。「2分で飽きる」という評判を一掃するアップデートとして期待が持たれました。

6月26日に行われたアップデートでは豆を食べると5分間だけ早く歩けるようになるアップデートが追加。こうしたアップデートのたびに公式YouTubeチャンネルには「ハトバースRadio」と称した10分程度の動画が公開され、ユーモアを交えながらユーザーに対しアップデートの詳細や意図を伝えます。

定期的なアップデートがユーザーの交流を生む

VRChatやclusterのようなメタバースプラットフォームやVRプラットフォームと呼ばれるアプリケーションでは、綺麗な背景や凝ったギミックを設置したワールドだけではありません。

定期・不定期問わずイベントが開催されるワールドが人々の交流やコミュニティが生まれるハブとして利用される傾向にあります。

『ハトバース』はこうしたプラットフォームの外側に位置していますが、こうしたアップデートでユーザー同士の交流が生まれています。もっとも、『ハトバース』にはコミュニケーション機能が実装されていないため、その交流は外部のSNS頼りとなるのですが。

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ゆがみん

1990年生まれの地方在住。インターネットに青春時代を持っていかれた。VRとesportsが関心領域。最近はnoteを拠点に活動している。