ARクラウドの課題
ARクラウドの課題として、以下の2点が挙げられます。
ポイントクラウドの設置
先述したように、ARクラウドの技術的要件として、ポイントクラウドの取得がありました。ポイントクラウドの取得として、レーザー光を照射し物体に跳ね返ってくるまでの時間から物体までの距離や方向を測定する「LiDAR SLAM」と、カメラで撮影された映像から3次元情報と向きを推定する「Visual SLAM」が挙げられます。
こうした技術を使って取得したデータを統合することで、ポイントクラウドのデータベースを作成しますが、屋内のデータと屋外のデータ統合は難しいのが現状です。
ポイントクラウドの共有方法
ポイントクラウドの権利保持者については、法整備やルールがまだ整っていません。例えば、マンションの一室のポイントクラウドを取得したとき、隣室と接している壁面のデータは、データ取得した人に権利があるとはいいづらいでしょう。
他人の部屋でAR体験をするとき、その部屋の情報を取得しないとオブジェクトを配置できません。ARクラウドではプライベートな部分にまでコミットするため、標準的な取り決めがなければトラブルに発展する可能性があります。
ARクラウドの4つの事例
ARクラウドの事例を4つ挙げていきましょう。
1.Blue Vision Labs
イギリスのスタートアップ企業であるBlue Vision Labsは、複数のユーザーが同一の仮想空間にオブジェクトを表示させ、対話的に操作できるプラットフォームを発表しました。
車のフロントカメラを利用して屋外のポイントクラウドを取得し、ARクラウドとして使えるようになる技術を開発。SDK(ソフトウェア開発キット)として公開しています。
2.6D.ai
オックスフォード大学の学生が起業したスタートアップ企業である6D.aiは、スマートフォンのカメラ画像から3次元空間情報を高速で解析できるSDKを提供しています。6D.aiの開発の目玉は「オクルージョンカリング」と呼ばれ、オブジェクトの手前に物体がくると描画をオフにする技術です。
オクルージョンカリングを実現するためには、現実世界にある物体の位置情報や障害物の有無などを判断しなくてはいけませんが、6D.aiは高い精度でカリングを実現しています。
参考:6D.ai
3.プレティア・テクノロジーズ
AR謎解きゲームを展開している企業が、プレティア・テクノロジーズです。プレティア・テクノロジーズは、ARクラウドのプラットフォームである「Pretia」のベータ版を2021年に発表しました。
Pretiaは、空間をスキャンしポイントクラウドを作成するモバイルアプリや、UnityでARコンテンツをマップ上に設置するサービス、複数ユーザーで共有体験ができるSDKなどのサービスから成り立っています。
参考:ARクラウドプラットフォーム「Pretia」のオープンβ版事前登録を開始/プレティア・テクノロジーズ株式会社
4.AR City in Kobe
株式会社MESONが開発した「AR City in Kobe」は、複数のユーザーが同時に作り上げる都市開発シミュレーション体験が可能です。あるユーザーがアクションすると、別のユーザーのタブレット上にアクションが反映されます。
活用の幅がグンと広くなるARクラウドに期待しよう
ARクラウドは、複数の人がAR体験を共有できるため、実現すれば画期的なソフトウェアインフラになるだろうと期待されています。
法整備や技術的課題はあるものの、すでに国内外のスタートアップ企業がARクラウドの技術を提供しています。ビジネスにもさらなる応用が可能になるので、ARクラウドの発展に期待しましょう。