MRの建築現場での6つの活用例
1.GyroEye Holo(ジャイロアイ ホロ)
株式会社インフォマティクスは、原寸大の図面や3Dモデルの映像を現実空間に投影するMRシステム「GyroEye Holo」を提供しています。GyroEye HoloはMicrosoft HoloLensに対応しており、紙の図面を使った目視確認が不要なため、ハンズフリーでの作業が可能です。
例えば、デザインの検討といったプレゼンの場だけでなく、現場での墨出しやケガキ作業、構造物の点検検査など、GyroEye Holoはさまざまな作業効率化に活用できます。
2.構造設計
地震などの自然災害による倒壊を防ぐために、安全性や機能性、経済性を考えながら構造の形式や材料を選び設計する作業が「構造設計」です。株式会社ディックスはMRを活用した構造設計に取り組んでいます。
MRの活用によって、3Dモデルを現実世界に映し出すと同時に、建築構造の内部でかかる力の大きさを可視化。力の大きさを色の濃さで表現することで、どのくらいの力がかかっているかが直観的に理解できます。
また、建築家や建築主とMRで可視化された情報を共有することで、より円滑なコミュニケーションが実現可能です。
3.遠隔地での作業支援
日本マイクロソフト株式会社は国土交通省・関東地方整備局に対し、HoloLens 2、Azure Remote Rendering、Microsoft Teamsなど、数々の遠隔支援ソリューションを提供してきました。現場ではHoloLens 2を装着し、さまざまな場所や角度から施工する物体の3Dデータを確認できます。
また、Azure Remote Renderingによって3Dデータがクラウド上にレンダリングされ、HoloLens 2デバイスにリアルタイムで表示。これにより、遠隔地にいるスタッフが、建設現場を確認しながら指示やディスカッションが実施できます。
国土交通省 関東地方整備局のインフラ分野の DX 推進を支援するため、遠隔支援ソリューションを提供(日本マイクロソフト株式会社)
4.安全衛生教育システム
株式会社ネクスコ・エンジニアリング北海道は株式会社インフォマティクスとともに、MRで橋梁や高速道路の内部構造を見える化する、保全技術教育の支援ツール「PRETES-e」を開発しました。
基礎や鉄筋、PC(プレストレストコンクリート)ケーブルや円筒型枠など、実際の構造物の内部がオーバーレイされることで、構造の基本的な考え方や設計・施工上の特性を学習することが可能です。また、Microsoft HoloLensを持たない研修生も、転送された映像が映し出されたタブレットや、遠隔地にある端末で複合世界上の研修が行えます。
PRETES-e(株式会社ネクスコ・エンジニアリング北海道)
5.BIMと融合した施工管理者研修
株式会社大林組は、MRを活用し施工管理を効率化するアプリなどを開発しました。
Microsoft HoloLensを装着しBIMで作った3Dの建築モデルを現実世界に投影し、設計情報の確認や検査記録の作成といった施工管理業務が効率化されます。複数人で同じモデルを共有できるため、効率的な確認や遠隔地からの指示も行え、工期の短縮にもつながるでしょう。
施工場所にBIMデータを重ね合わせるMR施工管理アプリ「holonica™」を開発(株式会社大林組
6.気流シミュレーション
新菱冷熱工業株式会社は20年以上実用化に取り組んできた数値流体解析(CFD)技術をベースに、MR技術の活用で空気の流れなどの解析結果を見える化するシステムを開発しました。CFD解析した3Dの気流シミュレーションを、実際の室内空間と重ね合わせて実寸大で確認できます。
また、室内空間を自由に動き回ることも可能で、任意のポイント気流シミュレーションを確認することも可能です。空気の流れだけでなく風速や温度、浮遊微小粒子や化学物質などが色付きの分布で表現されるため、直観的に室内環境を捉えられます。
さまざまな分野に活用されるMR
VRやAR、MRはビジネスへの活用が広がっている反面、専門のエンジニアが少ないという課題を抱えています。しかし、今後MRの活用が進展し成功事例が広まっていくことで、徐々に技術者も増えていくことでしょう。
今回は建築業界におけるMRの活用事例を紹介しましたが、MRは未知の可能性を秘めた技術です。建築業界だけでなく、さまざまな業界で業務効率化につながることが期待されます。