福岡県を基盤に鉄道、路線バスなどを運営する西日本鉄道株式会社(以下、西鉄)は2月25日、メタバース上に鉄道とバスのミュージアムを構築した「にしてつバース」をオープンします。
利用者が自分の分身となる「アバター」を介して3D車両の鑑賞や、電車・バスの車両運転席でのスイッチ操作体験をできるコンテンツを用意し、ファン獲得につなげる狙い。
同社によれば、メタバース上に構築された鉄道とバスのミュージアムは、日本初の取り組みだといい、鉄道ファンを中心に注目が集まっています。
運転席で操作が可能
にしてつバースは、バーチャル空間上に作成された西鉄電車・西鉄バスのメタバースミュージアムです。西鉄の修正第15次中期経営計画(2019年度〜2022年度)で、メタバースの活用を重点戦略に掲げていたことを受け、企画されました。
にしてつバースのコンテンツは、主に鉄道ミュージアムとバスミュージアムの2本柱です。
鉄道ミュージアムでは、天神大牟田線の主力車両となる5000形のほか、通勤電車として親しまれる3000形や、3000形をベースに改良された9000形、観光列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」といった車両の実物大トレインヘッドを解説文とともに展示します。
5000形の車両内には、自由に出入りができます。運転台にも入ることが可能で、利用者はアバターを介してドア開閉やワイパーの操作、ランプの点灯などが体験できます。
常設ギャラリーでは、車両、保線作業中の写真などを展示。通常は利用者が見られない場所や作業風景を紹介することで、西鉄の鉄道事業と同事業の安全への取り組みを理解してもらう狙いがあるとのことです。
ミニゲームコーナーも実装予定
一方、バスミュージアムでは、3Dモデルのほか、一般路線バスやBRT(連節バス)、高速バス、福岡オープントップバスの車両の一部を展示します。
3Dモデルのバスは、鉄道ミュージアムと同様に、利用者が車内を自由に出入りできます。車内では、気になるところをタップして各部の機能解説を聞いたり、運転席で、ドアの開閉や運賃モニターの操作、ライトの点灯をしたりすることができます。
常設ギャラリーには、西鉄を題材にした漫画「マンガでわかる!西鉄バス運転士」のイラストを展示します。
なお、西鉄は、ミニゲームのコーナーを設け、遊びの機能も充実を図る計画です。具体的には、鉄道、バスの両方の常設ギャラリーに、速度規制ルールに従って運転操作をし、西鉄福岡(天神)駅〜西鉄二日市駅間のタイムを競ったり、点滅する降車ボタンを早押ししたりするミニゲームを実装予定としています。
鉄道やバスをあしらったオリジナルカードをNFTとして販売
にしてつバースの見どころは、鉄道・バスのミュージアムで、車両を観覧したり、運転を操作したりするだけに留まりません。NFT(Non-Fungible Token)を利用したデジタルコンテンツの販売も、注目すべき取り組みです。
具体的には、「にしてつバース」内に開設される「にしてつNFTギャラリー」にて、鉄道やバスの車両の写真がデザインされたオリジナルカードをNFTとして販売します。
NFTはデジタルの絵画や音楽などを唯一無二の作品として認める技術のため、当然、にしてつNFTギャラリーで扱われるオリジナルカードが驚くような高値をつける可能性があります。この点、NFTを活用したデジタルコンテンツの販売は、NFTコレクター必見といえるでしょう。
今後は既存事業と掛け合わせた活用を検討
西鉄は、これまで電車やバス、商業、ストアといったリアルでのタッチポイントはたくさんあった一方、オンライン上での接点は多くないとの課題がありました。同時に、西鉄の歴史や車両を紹介する施設はありませんでした。
そうした課題は今回、にしてつバースがオープンすることで、解消されることになります。
それでも、西鉄は今後も精力的にメタバースを活用する計画であり、将来的にはすでに引退した過去の車両や、実際に運転していた運転士のコメントを展示するなどし、ファンに喜んでもらえる空間づくりに注力するとのことです。
また、西鉄は、ミュージアムだけに留まらないメタバース活用を加速させる考えです。具体的には、住宅や都市開発といった事業部との共同イベント開催など、既存事業と掛け合わせた活用を検討していくとしています。
「にしてつバース」公式サイトはこちら:NISHITETSU-VERSE BUS & TRAIN MUSEUM