PlayStation VR2の動向
2022年の1月5日には、『PlayStation VR2』が発表されました。『PlayStation 5』にUSBケーブル一本で接続するだけで、VR体験が可能となる『PlayStation VR』の後継機種です。
『PlayStation VR』はいまこそ解像度こそ低めで、トラッキングのために『PS Camera』の設置も必要なものの、『PlayStation 4』さえあればVRを体験できるというハードルの低さが売りでした。『PlayStation VR2』もこの方向性を引き継ぎ、『PlayStation 5』さえあればVRが体験できる手軽さのみならず、基礎スペックもハイエンドVRヘッドセットに匹敵します。トラッキングについても、ヘッドセット本体に設けられたカメラでトラッキングを行うインサイドアウト方式を採用し、『PS Camera』の設置は不要となりました。
現時点では、『PlayStation 5』そのものの流通に課題がありますが、無事に『PlayStation 5』が行き渡れば、ゲーミングPCを用意するよりもハードルの低いVR体験の入口になり得ます。ただし、『PlayStation VR』がそうだったように、体験できるコンテンツがPlayStation Storeに依存するのではという懸念は挙げられます。
ハイエンド機種の選択肢は広がる
ヘビーユーザーの運用に応えるハイエンドなVRヘッドセットも、2022年は選択肢が広がるのではと予想されます。
Varjo社より発売された『Varjo Aero』は、「肉眼レベルの解像度」を謳う従来の同社製品に匹敵する解像度を持ちながら、要求スペックはラップトップでもギリギリ確保できるラインという、絶妙な性能のVRヘッドセットです。価格も298,000円(税込)と、法人向けハイエンド機種のエントリーモデルともいえる製品となっています。なお、本機種は法人向けとされていますが、同時にプロシューマーに向けた製品としても位置づけられており、実際に日本国内でもVRメタバースのヘビーユーザーが購入しているのを確認できます。
また、中国のVRヘッドセットメーカー・Pimaxからは、両目12K、水平視野角200度、垂直視野角135度、ゴーグル単独でのフルトラッキング実現など、モンスタースペックともいえる新型ヘッドセット『Pimax Reality 12K QLED』が発表されています。実物がどれほどこれらの機能を実現するかは不明なものの、実現すればプロフェッショナル向けの選択肢として浮上してくるでしょう。『Pimax Reality 12K QLED』は、本記事公開時点では2022年第4四半期に出荷が開始される予定です。
上記以外にも、法人やプロシューマーに向けて訴求するハイエンド機種の発表は続いています。一方で、世界的な半導体不足はいまも続いており、今後発売が予定されるVRヘッドセットへの影響が懸念されます。実際に、シンガポールのDeca社が発表した高性能・安価な新型VRヘッドセット『DecaGear』は、出荷が2021年第4四半期から2022年末へ延期され、値上げまで発表されていますが、その原因のひとつに半導体不足を挙げています。
参考:Varjo Aero – 株式会社エルザジャパン
参考:Pimax Reality 12K QLEDプレスリリース
「Quest 2一強」が揺らぐ一年になるか
2022年2月時点では、未だに『Meta Quest 2』が安価かつ優秀な性能から、「迷ったらこれを買えばいい」と言われるほどの地位に君臨しています。それゆえに、VRコンテンツやメタバースプラットフォームでは、『Meta Quest 2』への動作対応が進みつつあります。また、Meta社はメタバースの普及にも全力を注ぐことを宣言し、その象徴ともいえるメタバース『Horizon Worlds』や、コラボツール『Horizon Workrooms』は『Meta Quest 2』でのみアクセスが可能なため、今後も普及は加速していくものと思われます。
一方で、ゲーミングPCは持たないが『PlayStation 5』は持っている人にとっての最適解は『PlayStation VR2』になるでしょうし、『VRChat』に一日中ダイブしている人には『MeganeX』が心地よい相棒となり得ます。2022年のVRヘッドセットは、こうした「人や用途ごとに最適な一台」という立ち位置で訴求する製品が増え、「なんでも『Meta Quest 2』でよい」という状況が揺らぐ可能性があります。
個人・法人を問わず、VRヘッドセットの導入を検討する場合、「VRでなにをしたいか」を念頭に置いて、情報収集や製品選定を行うとよいでしょう。