2022年は、「メタバース」に大きな注目が集まった年でした。特に「VRChat」は代表的なメタバースのひとつとして特に注目を集め、様々な場面で活用され、メディアなどでも多く取り上げられました。
本記事では、2022年のVRChatではどのようなことが起き、話題となったか、筆者が観測した範囲でお伝えします。
企業も注目するVRChat活用
まず目立った例として、企業などのメタバース活用における、VRChatの選定が挙げられます。東京理科大学、モスバーガー、京セラ工具部、兵庫県養父市、カラオケまねきねこ……などなど、様々な企業や地方自治体などがVRChatに特設ワールドのオープンや、イベント開催などを行っています。企業にとってのVRChatは、ユーザーが多いがゆえの注目度の高さ、そして圧倒的な表現自由度の高さが、最大の魅力と言えるでしょう。
VRChat向けのアバター市場も拡大が続いています。特に、現実のアパレルブランドを展開しているアダストリアが、VRChat向けアバター業界に進出するという大きな動きがありました。アダストリアのアパレルに身を包んだオリジナルアバターは、VRChat発クリエイターと共同で制作されており、アバターだけでなくアバター向け衣服も展開されました。「バーチャルマーケット」の常連となったビームスも、バーチャルファッションアイテムを着実に展開し続けており、ファッション・アパレル業界とVRChatアバター業界の接近が始まっています。
住人へ注目するメディア
そして、VRChatの住人にも注目が集まり、地上波のテレビ番組などに出演するVRChatユーザーが増えた一年でもありました。特に、『メタバース進化論』の著者・バーチャル美少女ねむさんは様々なテレビ番組やWeb番組に出演しており、メタバースのことを知らない人でも目にした方は多いのではないでしょうか。
https://twitter.com/nhk_100CAM/status/1587451645604110338
今年の前半はジェンダーや恋愛観といったところにマスメディアの注目が集まっていたものの、後半に進むにつれてクリエイター経済や自己表現などの場としてのVRChatに注目するような切り口も増え、少しずつバランスの良い取り上げが増えていった印象があります。直近ではNHK「100カメ」で、様々な属性のユーザーを、VRChatプレイ中の現実の姿も合わせて映すという取り上げ方がなされました。
とはいえ、専門メディア以外は「表層」にしかタッチできていないのが実情であり、住人にしっかり寄り添ったマスメディアの扱いは、まだまだ時間がかかるかもしれません。こうした課題は、マスメディア側に理解者が生まれることでゆっくりと解決に向かう可能性があります。
ハイクオリティな映像作品が生まれる場
VRChatで撮影・収録された、ハイクオリティな映像作品が増えたのも今年の大きな特徴と言えるでしょう。とりわけ、全編をVRChatにて収録した長編ドキュメンタリー『We Met in Virtual Reality』は、VRChat英語圏ユーザーの生活を追体験できる映像作品として注目を集め、イギリスの国際映画祭「レインダンス映画祭」のVR部門「Raindance Immersive」にもノミネートされました。同作は、『バーチャルで出会った僕ら』という邦題で、「U-NEXT」で配信中です。
映画を撮影する動きも加速しつつあります。ロールプレイ団体「ホテル・カデシュ」は、全編をVRChatにて撮影した映像作品『プロジェクト:エメス』を制作・発表。格闘シーンなどのアクションもVRChat内で撮影されており、画作りの本格さも相まって大きな話題を呼びました。さらに、映画の世界観に沿った謎解き・ロールプレイイベントや、作中で実際に使われたワールド公開など、映像作品にとどまらないマルチな展開を見せました。
ハイクオリティなミュージックビデオを発表するクリエイターチーム「VisitoR」も注目されました。2021年からストーリーをもたせたミュージックビデオを、オリジナル楽曲を中心に制作しており、2022年にはフルボディトラッキングを駆使するアクターたちも参加した、臨場感と躍動感のある映像を発表しました。チームには様々な国籍のユーザーが参加しているのも大きな特徴で、国境の壁を越えた創作活動の場としてもVRChatは活用できることを現在進行系で示しています。