月面の映像データを活用し、地球上で風景や振動を体感。VR技術を活用した月面探査の疑似体験が誕生
VRの技術を活用した月面探査の疑似体験が、2022年半ばにも楽しめるようになる見通しです。
これは、月面探査車『YAOKI』を開発するベンチャー企業・ダイモンと、浜松市でVR制作などをおこなう開発会社・クロスデバイスとのコラボレーションによって実現したもの。東京工業高等専門学校の学生のアイディアで、『YAOKI』にVRシステムを搭載し、探査車からの眺めや振動を地球上で体感できます。
探査車に搭載するのは、クロスデバイス社が映像の高画質化などに技術協力したVRシステム『シンクロアスリート』。傾きや加速度などを計測するセンサーが組み込まれたスマートフォンとカメラをアスリートに装着し、その視界を再現した映像をVRゴーグルを通じて楽しめるシステムです。今回の取り組みでは、同様の技術を応用し、探査車からさまざまなデータを地上に送信することを可能にしました。ユーザーは、VRゴーグルを装着した上で半球体の装置に乗り込みます。映像に合わせて装置が前後、左右、上下に動くことで、月面の感覚を全身から体感できる構造となっています。
ダイモン社によると、次に『YAOKI』を月面へと送り込むのは、2022年の半ばであるとのこと。同社社長の中島紳一郎氏は、「体験装置に乗れば、(誰もが)宇宙飛行士になれる」と話します。クロスデバイス社は今後、映像データを活用し、全国の科学館などで体験イベントの開催を企画しています。現状では、月から一度に送信できるデータ量が少ないため、映像をベースに提供されますが、将来的に月面からの通信回線が高速化すれば、『YAOKI』のリアルタイムの動きを元にしたライブ体験も可能になるそうです。
『シンクロアスリート』について
東京工業高等専門学校が企画・設計・開発し、第七回ものづくり日本大賞(内閣総理大臣賞)を受賞したシステム。アスリート育成、モータースポーツ、アーケードVRとしてのイベント利用など、社会実装に向けて技術開示を受けた上で、クロスデバイス社が機能改良をおこない、NTTドコモなどと、5G通信でライブ中継が可能な「シンクロアスリートLive」を実現している。
『YAOKI』とは
『YAOKI』は、月面開発の最前線で活躍する超小型、超軽量、高強度を兼ね備えた月面探査機(月面ローバー)。2022年、NASAの月輸送ミッション「CLPS」企業のアストロボティック・テクノロジー社の月着陸船ペレグリンに乗って、民間で世界初の月面探査を果たした。