ソーシャルVRサービス「VRChat」は、大きなイベントの開催が続いたこともあり、いま特に注目を集めているメタバースの一つです。一般ユーザーはもちろんですが、法人にも参入を検討しているところがあるかもしれません。本記事では「VRChat」の概要と、法人の活用事例などを紹介します。
アメリカ発のソーシャルVRプラットフォーム「VRChat」とは?
「VRChat」は、VRデバイスを介してアクセスし、ほかのユーザーとの交流ができる「ソーシャルVR」と呼ばれるサービスです。ただし、VRデバイスは必須ではなく、デスクトップアプリケーションからのアクセスも可能です。2014年からスタンドアロンアプリケーションとしてリリースされ、その後2017年にSteamVRにて早期アクセスが開始、2019年にはMeta Quest 2版がリリースされています。
数あるソーシャルVRサービスの中でも、特にユーザーが多く、コミュニティが活発なのが特徴です。国内でも代表的なソーシャルVRとして知られ、「バーチャルマーケット」をはじめとした大規模なイベントが開催されてきました。そして直近では、Meta社の発表に端を発するメタバースブームの流れを受けて、大きな注目を集めています。
「VRChat」はSteamより無料でダウンロードし、遊ぶことが可能です。様々な特典が付与されるサブスクリプションプランは存在しますが、それ以外の公式の課金要素はありません。ただし、快適に動作させるためには、ある程度のスペックのゲーミングPCが必要となります。VRでアクセスする場合はもちろん、VRヘッドセットの購入が必要となります。
「VRChat」ではなにができるのか?
多くのソーシャルVRサービスと同様に、「VRChat」には様々な「ワールド」という空間が用意されており、そこに好みのアバターでアクセスすることができます。特筆すべきは、ワールドもアバターもユーザー側が、Unityと公式SDKを介して自由に作成し、アップロードができる点です。
その自由度は高く、ワールドであれば四畳半の部屋、ひとつの街、広大な大自然といった様々な空間はもちろん、有料のVRゲームと遜色ないゲームを楽しめるワールドや、果ては音楽アーティストによるVRMVまで実現可能です。アバターの幅も広く、リアルな風貌の人間、アニメ調の美少女、猫や犬といった動物、ロボットと、ユーザーの思いのままの姿でいることができます。また、その気になればアバターそのものにギミックを仕込み、衣装の早着替えや空中浮遊、魔法のようなエフェクト発動も可能です。
上記のようなワールドとアバターの自由度の高さに加え、VRによる没入度の高さと、フルトラッキングデバイスによる身体表現の幅広さも備わっています。そのため「VRChat」では様々なコミュニティが生まれ、多種多様なイベントが規模感を問わずほぼ毎日開催されています。
もちろん、ユーザー同士のコミュニケーションがメインのサービスなので、気の合う友人とのおしゃべりや飲み会、ワールド散策といった遊びに興じる人も多く存在します。好きな姿と場所で、気の合う友人といつでも会える居心地のよさから、VRヘッドセットを一日中つけたまま、「VRChat」の中で”暮らしている”人も少なくありません。
法人による「VRChat」活用事例
ユーザー主体の文化が根づいている「VRChat」ですが、法人による活用事例も多く存在します。とりわけ有名なのが、株式会社HIKKYが開催している「バーチャルマーケット」でしょう。出展者によるプロモーション活動や3Dモデル販売、そのほか様々な商品(食品やアパレルなど)の販売が実施される、世界最大クラスのVRイベントです。企業出展数も開催のたびに増えており、新たな顧客開拓の場としても注目されています。
日産自動車株式会社は、2021年10月に公式ワールド「バーチャルギャラリー『NISSAN CROSSING』」をオープンしました。銀座にあるギャラリー「NISSAN CROSSING」を「VRChat」上に作成したというもので、日産の最新のEV(電気自動車)の3Dモデルが展示されているほか、広めのフリースペースも設け、「ユーザーが自由に使える場所」として開放しているのが特徴です。このワールドを軸に、日産はさらに「VRChat」上で「日産アリアとめぐる環境ツアー」も開催しており、「VRChat」を活かした施策にかなり積極的な姿勢を見せています。
エンタメ領域では、サンリオが2021年12月に音楽フェス「SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland」を開催しました。「サンリオピューロランドの地下に広がる会場」を舞台に、リアルアーティスト、バーチャルアーティストによるパフォーマンスを眼前に楽しめたほか、ユーザー同士の交流やサンリオキャラクターとのグリーティングができるフロアや、アンダーグラウンドな雰囲気ただようクラブフロアもあり、ライトユーザーからヘビーユーザーまで幅広い支持を得るイベントとなりました。